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『チーム日産~モータースポーツにかける者たち』第19回 ~ KONDO RACING D’station ADVAN GT-Rドライバー 佐々木大樹 ~

2014.03.28 Fri

日産モータースポーツを支える者たちに、あらたな光をあてるコラム。
第19回は、NDDP育成選手で、2014年度、
いよいよGT500に挑む、新進気鋭のドライバー、
佐々木大樹選手の素顔に迫ります。


「小さい頃は、とにかくおとなしくて…。人前に出たりするのが
苦手で。大声を出したりすることもできなくて。
それを見かねたんでしょうね、父がね。
プロ野球、巨人の応援団に僕を入れたんです。
声を出す練習ってことだったんでしょうね。
父は熱烈なジャイアンツファンで、僕も好きになりました。
当時、背番号9のキャッチャー、村田真一が大好きでした。
最初は、なかなか声を出せませんでした。
でも、応援団として球場に通っているうちに、いつの間にか、
『むらたぁ!』って、大きな声が出せるようになったんです」


「父に連れられて、小学一年生のとき、カートをやるんですが、
嫌でしたねえ、乗りたくなかった。ガソリンの匂いも嫌で、
なによりアクセルが踏めなかったんです、怖くて。
そうしたら父が、ボクの右足を、ガムテープで
アクセルにグルグル巻きつけました。
スタートは怖かったけれど、だんだん慣れて来て…。
で、ボクは、こう思ったんです。
もっともっと速く走りたい。負けたくない!」
きっと心底、負けず嫌いなんだろう、瞳がキラキラし始めた。


「どうしたら速く走れるか、必死で考えました。練習しました。
仲間に負けたくなかった」
彼の負けず嫌いは、レースだけに留まらなかった。
「勉強も、負けたくなかった。勉強、好きでしたね。
結果を想定して、そのために弱いところを補強したり、努力して、
自分で組み立てていく。自分さえ頑張れば、なんとかなる。
やればやるほど、結果はついてくるし、
何よりも集中力がつくのが楽しかった」
言葉通り、佐々木は、中学高校と進学校を経て、慶応大学に入る。
どうしてそこまで負けず嫌いになったんでしょうか?と
尋ねると、ふわっと優しい笑顔になり、
「父の影響でしょうねえ。ボクに対して、子供だからと手加減せずに、
いつもガチな人ですから。
たとえばボーリング、今でも父に負けますよ。誰より父が
負けず嫌いなんです」


彼の印象が変わっていく。
骨太で根性に満ちた不動の心の持ち主。
そんな強いメンタルを持った佐々木に、
ドライバーとして日々心がけていることを訊いた。
「とにかく練習が大事です。
レーシングドライバーにとっての練習時間は、
決して十分長くとれるものではありません。
短い時間に、何がやれるか、
シミュレートする必要があります。
つまり、いかに練習時間を濃くするか、それが成長の鍵、なんです。
まず、事前に課題を立てます。今日はブレーキングなのか、
ハンドリングなのか、その習得のためには、どうしたらいいのか。
そして実際に走行してみて、検証し、つかんだことを忘れないために
定着させます。練習後のレポートは欠かしません。
レースには瞬時な判断、瞬間的な頭の回転が求められます。
路面状況、他のドライバーとのかけひき、そしてコーナーを
どう攻めるかなど、一度として同じ条件はない。
ボクはまだまだ未熟な面が多い、だからこそ、
日々の練習が、最終的に自分を支えてくれるんだと思います」


求道者という言葉が浮かんだ。
練習が嫌になったり、ストレスに押しつぶされそうに
なることはないのだろうか?
「そうですねえ、ないですね」
即答。決して格好をつけて言ってるようには見えない。
「自分自身、嫌になったり、ストレスを感じる前に、
それを越えるだけの練習をしますね」
ここでも爽やかな笑顔。なんという若者だろう…。頼もしい!
色白で都会的な風貌、体も細身。
そんなともすれば華奢なイメージの外見からは
想像もできない芯の強さが、言葉から、
そして目力から伝わってくる。

「ここイチバンの集中力には、自信があります。
いろんな局面で、今、自分が何をしなければいけないか、
瞬時の判断が求められますから、集中力は欠かせません」
大学生活も友人と遊ぶより、練習を優先してきた。
でもそれはきっと彼にとって苦行ではなく、
負けないために必要なこと。
父親譲りの負けず嫌いが、彼の心を強くしていったに違いない。

レース前のゲン担ぎやジンクスなどありますか?の問いには、こう答えた。
「レースが始まったら、自分のクルマが最高だと思うようにしています。
チームのみなさんが、全ての力を注ぎ込んでクルマを整えてくれた。
それで速く走れないとすれば、全部、自分の責任です。言い訳しないこと、
それを信条としています。自分が乗りこなせさえすれば、必ず、勝てる!
そう思ってクルマに乗り込みます」
質問に対する答え方がどれも潔く、クレバーだった。
かといって謙虚で優しい姿勢は崩さない。
「いちばん気をつけるのは、油断、ですね。
油断することが、最も危険です」
彼には気負いも驕りもない。
油断を防ぐには?と聞けばきっとこう返すに違いない。
「集中力です」
「去年、富士スプリントカップで初優勝できたとき、
日産やNISMOのチームのみなさんが、
ものすごく喜んでくれたんです。ボクもとっても、うれしくて…。
チームで戦っていることがあらためて、よくわかりました。
今年は、ずっと目標にしてきた、
GT500で戦うことができるわけですが、
自分が選ばれたのは、勝つためだと思っています。
クルムさんには、特にメンタルやレースへの向き合い方などを学び、
心を集中させて、1位を目指したいと思います。
クルムさん、どこかお父さんみたいなんです(笑)」

手を見せてもらった。
指が長い、しなやかで大きな手。
「ピアノやってました?」
「ええ、やってました」
きっと、誰よりも練習したのだろう。

インタビュールームを去っていく彼の
後姿に窓から陽が射している。
今年の挑戦を心から楽しみにしているような
堂々とした背中は、金色に輝いて見えた。

文・写真 北阪昌人


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