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『チーム日産~モータースポーツにかける者たち』第20回 ~ #23 MOTUL AUTECH GT-R ドライバー 松田次生 ~

2014.04.22 Tue

日産モータースポーツを支える者たちに、あらたな光をあてるコラムは、
おかげさまで、連載も20回を迎えます。
2014年度、新しいシーズンのスタートにお話をお伺いするのは、
NISMOに移籍して、23号車という重責を担うことになった松田次生選手。
2回目の登場となる今回は、新しいレギュレーションで造られたクルマの
感触や初戦を終えての感想、次なる富士戦への意気込みを聞きました。


「いやあ、初戦の岡山は…」
悔しさを噛みしめながら、松田次生が現れた。
なぜだろう…第1戦の結果とは裏腹に、彼が醸し出す空気には、
『自信』の二文字が浮かび上がる。
「岡山国際サーキットは、広くないし、ストレートが長くないから
抜きづらい。だから早く前に出たかった。ちょっと攻めすぎました」
スタートしてすぐのオープニングラップで他のクルマと接触。
コース中央で車は止まる。
GT300クラスのクルマが23号車の両脇を、ビュンビュンと
追い抜いていく。なんとかクルマを回転させ、レースに復帰。
「トップと、56秒の差ができてしまいました。でも、チームの結束力も
あって、最終的にその差を38秒まで縮められました。7位。
もちろんこの結果に満足はしていませんが、持っているポテンシャルを
実感できました。走ってみて、速いっていう手ごたえが、あったんです。
フツウに走っていれば、表彰台にあがれたんだなあって確信できました」
目がキラキラ輝いている。前回のインタビューでも感じたけれど、
この人の、ポジティブな優しさで人を包み込む力は健在だった。

「新しいマシンは、まず今までより軽くなりました。100キロくらい
違います。搭載されるエンジンは、2.0L直4直噴のターボエンジン。
従来のV8 3.5Lに比べてどうなんだろうって思ってましたが、
ハンパなく速い。岡山のコースレコードが、1分19秒台ですよ。
これって、F1のタイムに近づいてるってことです。
技術の進歩は本当に凄い!」

運転していてどんな変化が、あるいはどんな点に注意が必要なんですか?
と尋ねると、
「重いクルマって、そうだな、たとえばトラックやバスを
イメージしてもらえばわかると思うんですが、カーブのとき
ハンドルを切ると、動きが大きくなるんです。
でも今回のマシンは、軽くて、ダウンフォースが効いている。
だから、よりビビットに反応してくれる。レスポンスがいいんです。
フォーミュラカーに近くなってるんです」
では、このニューマシンで戦うにあたって、気をつけたいことは?
とさらに訊くと、
「そうですね、やっぱり、予選の戦い方がより大事かな、と。
運転性能がいいので、どれだけ決勝の時、いいポジションに
つけているかが、大きな鍵になります」

松田はとにかくクルマが好きだ。
メカニックの人にも意見を言ったり、提案したりする。
彼にとってはすべての乗り物が、興味の対象であり、
ドライバーという天職へのフィードバックなのだという。
そして決してひとりよがりにならず、乗り物の楽しさを
万人にわかってもらいたいという努力を怠らない。
わかりやすい言葉で説明、解説し、少しでも多くの人が
乗り物に興味を持ち、触れてもらえるように、
文字通り東奔西走している。

「ボクはその、鉄道も好きなんですけど、たとえば新幹線。
あの長い鼻を見ているだけでワクワクしますね。
トンネルを出るときの衝撃音を緩和するための空力、速く走るため、
安全のための技術。そう、時代とともに進化していくものが好きなんです。
ジェット機もそうです。自分が乗るマシンへのヒントが
そこにあります。
乗り物ってよく観察すると、すべてのパーツに意味があることが
わかってきます。サーキットを走るクルマも、例外ではありません。
モータースポーツの楽しみ方って、いろいろあると思いますが、
たとえば、ピットウォークというのがあります。
ピットに停まっているクルマを間近で見ることができるんです。
そこで、速く走るための小さなパーツや、
リアフェンダーの作り方なんかに注目してほしいですね。
ミラーだって各車違ったりします。
フォルムから入ると、愛着がわきますよ。
そう、サーキットで走るクルマから、市販車に応用、
採用されているパーツ、たくさんありますから。
自分が乗っているクルマとの比較とかしてもらえるとうれしいですね。
クルマって手をかければかけるほど、愛着がわいてくるものです。
ホイールひとつとっても、あ、カッコいいなと思ったら変えてみる
だけで、そうとう気分アガりますよ(笑)。
なんでしょうね、相手はあくまで機械だったりパーツなんだけど、
こちらが手をかければ、その分応えてくれるような、
そんな感覚が、あるんです」

彼は本当に、クルマが好きなんだということがわかる。
インタビュー会場となったNISMOの駐車場で、
彼の愛車を見せてもらった。進んでエンジンを見せてくれる。

「免許とりたての時が、ちょうど、GT-Rの33が出た頃で、
あこがれましたねえ。
あのエンジン音、しびれました。
いつか、あんなクルマに乗ってみたいって、本気で思いました」
夢は目標になり、彼は今、ここにいる。

NISMOからスタートし、数年ワークスチームを離れカルソニックへ、
そして今回再びNISMOへ。
その軌跡に心境の変化はあるんだろうか?
「レースへの取り組み方は、なんら変わることはありません。
ただ、背負うものが大きくなりました。その分、バックアップも増えて、
やりがいが強くなりました。とにかく結果が恩返しだと思っています。
今までボクを支え、応援してくださったみなさんに応えたい。
メーカー直系のワークスチームがもう2年、勝っていないんですよね。
だからこその期待、ものすごく感じます。
新しいレギュレーション(新型車)の年はいつもチャンピオンを
獲得してきた歴史もあります。
その記念すべき年に、自分が返り咲いたというのも、
意味があるんだと心にズッシリ響いています。
23号車は、やっぱりスペシャルです。みんなを引っ張る役割がある。
とにかく自分が勝つことで、空気を変えたい。
そんな気概に背中を押されます。
勝って勝ち癖をつけたいですね。ひとつ勝てば、士気が高まります。
いいスパイラルでチームが昇っていける気がします。
富士は、距離も500キロですし、ストレートも長い。
岡山とは違った戦い方で挑みます。
持っているポテンシャルを発揮できれば、十分、勝機はあります!」
力強い口調。彼からあふれる『自信』が頼もしかった。

最後に変な質問をしてみた。
クルマ以外で運転したい乗り物は?
彼は即座にこう答えた。
「ボーイング747です」

文・写真 北阪昌人

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