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『チーム日産~モータースポーツにかける者たち』第22回 ~#3 B-MAX NDDP GT-R ドライバー ルーカス・オルドネス~

2014.06.27 Fri

日産モータースポーツを支える者たちに、あらたな光をあてるコラム。
今回は、先ごろ、ル・マン24時間レースに「ガレージ56」枠から参戦する
電力駆動レーシングカー、NISSAN ZEOD RCのドライバーにも選ばれた、
ルーカス・オルドネス選手。ゲーマー出身という彼の素顔に迫ります。

「リスタートできないこと、かな」
ゲーマー出身のルーカスに、ゲームとリアルなレースの違いについて
尋ねると、笑ってそう答えた。
「実際のレースは、言葉にできないアドレナリンがでます。
エンジンの音、ハンドルのフィーリング、コーナーで感じる遠心力や
ダウンフォース、心拍数もあがる。自分がスポーツマンであること、
そう、プロフェッショナルであらねばならないことが、よくわかります」

ルーカス・オルドネスは、スペインのマドリッド出身。
GTアカデミーからレーシングドライバーになった。
『バーチャルレーシング(ゲーム)の世界において、
現実のレーサーとなる優れた人材を見つけることが果たして可能なのか?』
そんな素朴な疑問から始まったGTアカデミーは、
欧州日産とソニー・コンピュータ エンタテインメント ヨーロッパ社の
コラボレーションにより実現した。
プレイステーション用ソフト、『グランツーリスモ』からエントリーし、
勝ち残った者が晴れてプロのドライバーへの切符を手にすることができる。
現在は、アジア、アフリカでも開催されており、
グローバル規模で広がりを見せている。
ルーカスは、ヨーロッパ10カ国2万5,000人が参加した
記念すべき初回大会で、見事勝者に輝いた。
ゲーマーからリアルレーシングドライバーへ!言うは易しだ。
二次元の世界からいきなりレース場でハンドルを握るためには、
もちろん、優れた適応能力や天性のセンスが不可欠だろう。そして今、
すでにレーシングドライバーとして実績をあげているルーカスには、
さらに秀でた才能があった。
それは、真摯な態度と勤勉さ。どんな些細な出来事、言葉からも、
何かを学びとろうとする姿勢には頭が下がる。
彼は今もグランツーリスモをシミュレーターとして活用している。
走ったことのないサーキットを覚えているのだという。
この事実は、シミュレーターの精度の高さやリアリティと、
ルーカスの勉強熱心な姿を映しだしている。

「幼い頃から、父の影響でカートに乗っていました。
10歳くらいには、レーサーになりたいって夢を見ていましたね。
でもいつしかフツウに学生になっていました。
MBAの資格を取って、きっと会社の一員になり、ビジネスの世界で
働いていくのだと思っていました。
でも…、GTアカデミーで人生が大きく変わりました」
ふわっと相手を包む笑顔、貴公子のようなたたずまい、彼なら
ビジネスマンとしても優秀な成績をおさめていたのだろうと想像できた。
「リアルにレーシングカーのハンドルを握ったとき、身体がふるえました。
夢がかなった。ああ、自分は夢をどこかに捨てたんじゃなく、ずっと心に
しまってきただけだったんだって思いました。ドライビングの時間は、
特別な感情が生まれます。ストレスもかかるけど、集中力もハンパない」

ドライバーとしての資質でいちばん大切なことは何だと思いますか?と
訊くと、すかさずこんな答えが返ってきた。
「いかに、まわりの人とコミュニケーションがとれるかってことですね。
モータースポーツはチームワークだと思います。
ドライブしているのは自分ひとりかもしれない。
でも、そこにはたくさんの人が関わっています。
メカニックの人には常にいろんな情報やアドバイスを受け、
あるいはこちらからもフィードバックする。
レースでも戦略や時々刻々と変わる状況を皆で共有していく。
大切なのは、まわりの人からもらった情報やアドバイスをしっかり学んで、
しっかり自分のドライビングに活かすことなんです。
チームみんなで戦っている、それを実感できたことはとっても大きいです。
誰が欠けてもやれない、みんながそれぞれの部署でスキルをあげていく。
そんなチームワークのスポーツだからこそ、責任が生まれる。
それが自分を成長させるのに、とっても必要なことだと思います。
とにかく勝ちたい!その思いを共有できるチームと一緒に戦えるのは、
とっても幸せなことです!」
きっぱり言い切る姿が清々しく、チームの仲間への多大なる尊敬を感じた。

海外と日本の違いはありますか?と尋ねると、
「ヨーロッパのレースでは、タイヤが一種類ですが、
日本のSUPER GTでは、いろんなメーカーのタイヤを採用できる。つまり、
競争が起こる環境なんです。100%の力を出さないと、わずかな差で
負けてしまう、そんなよりプロフェッショナルな世界だと思います」
話していて気がついた。
ルーカスは、何度も『プロフェッショナル』という言葉を使う。
それは彼の自分への戒めであり、小さい頃から憧れていた
モータースポーツへの畏敬なのかもしれない。

ル・マンへの参戦について訊いてみると、
「今から、ワクワクしています。待ちきれません(笑)。
歴史的なことに関わることができて、本当に幸せです。
NISSANの最高の技術を証明したいですね」
瞳がキラキラしている。この人は本当にクルマが、
レースが好きなんだと思った。
「GT300クラスでも、カズキ(星野一樹選手)と一緒に、
チャンピオンを目指します。
彼は、ファンタスティックでプロフェッショナルなドライバー。
富士でもポールポジションが取れましたし、
オートポリスでも手応えを感じました。一緒に戦えるのが、うれしい。
数々のレジェンドをつくってきた長谷見監督は、尊敬する人。
勝つってことを知っている人です。自分がプロフェッショナルな
レーサーとして成長するためになくてはならない大切な人」

ストレス解消はどうしているんだろうか。
「好きなことをやるのが、いちばんいいですね。サイクリングしたり、
カートに乗ったり、あとは、スペインの家族に会うのが
いちばんリラックスするかな(笑)」
日本食で好きなものは?
「鈴鹿で、うなぎ、食べました。とっても美味しかった。
もちろん箸で食べましたよ」


手を見せてもらった。
しなやかで、大きな手。自信に満ちた頼もしい手だった。
彼は最後にこう言った。
「2014年は、忘れられない年になります。NISMOからSUPER GTの
GT300クラスのドライバーとしてデビューできて、
ル・マンにも参戦できる。モチベーションは、最高ですよ、
だって…夢がかなったんですから」
いい顔だった。彼にはもうリスタートは必要ない。
目の前のレースにただ向き合う。
自分が望むプロフェッショナルを目指して。

文・写真 北阪昌人

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