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【Sports Graphic Numberタイアップ企画】レーシングドライバー松田次生の世界 第2回

2014.08.29 Fri

もっかポイントランキング3位で、初の総合優勝も射程圏内の松田は、「チームクルー全員が緊張感を持ってひとつの方向を向いていないと勝てない」と言い切る。そのためには敢えて非情な面を見せることもある。連載2回目は、チームワークの重要性を松田に聞いた。

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大串信=文 text by Makoto Ogushi
佐貫直哉=写真(ポートレイト) photograph by Naoya Sanuki
折原弘之=写真(レース) photographs by Hiroyuki Orihara


■第2回 ヒリヒリとした緊張感が勝利を導く

No.23 MOTUL AUTECH GT-Rに乗る松田次生/ロニー・クインタレッリ組は6月1日、オートポリス(大分県)で開催されたSUPER GTシリーズ第3戦でポールポジションからスタート、危なげなくレースをまとめ上げ優勝を飾った。
65周のレースを終え、マシンをホームストレートに駐めると、松田とクインタレッリは表彰台の頂上に上がった。ニスモとしてエントリーしたマシンがGT500クラスで優勝するのは2011年最終戦以来、2年8か月ぶりのことだった。

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(第3戦オートポリスでは日産系チームが表彰台を独占)

表彰台を多くのファンや関係者やメディアが取り囲み勝者を讃える。その群衆の中に、ひときわ顔を輝かせて松田とクインタレッリを見上げる集団がいた。ドライバーと共にその週末のレースを戦い続けたニスモのピットクルーたちである。

「レースはドライバーだけでは勝てません。たとえばぼくたちがコース上で1秒稼ぎ出すのは大変ですが、(レース中に義務づけられた)ピット作業ではメカニックのがんばり次第で1秒縮められるんです。ぼくたちにとっては大変大きなプラスです」

メカニックは、レーシングドライバーが最も闘いやすいようにマシン各部をセッティングしスタートラインに送り出す。
だがレースがスタートしても仕事は終わらない。タイヤ交換はもちろん、予期せぬトラブルに対応するなど様々な面からレースを支援しながらフィニッシュまで戦い続けるのだ。ニスモでは、タイヤ交換時間を短縮するために常日頃からファクトリーでタイヤ交換の練習を積み重ねているという。サーキットでも決勝前日の土曜夕方、練習の仕上げをする姿が見られる。

しかし複雑なレーシングカーを走らせるためのチームにはエンジニアやメカニック、マネージャーなど様々な役割、立場のクルーが属している。それぞれが車体担当、エンジン担当などに別れ、1チーム数十人の大所帯だ。その全員の意識をひとつにまとめ、チームワークを確立するのは容易ではない。

「全員が”チームで勝つ”という意識を持っていないと、ドライバーだけが頑張ってもレースには絶対に勝てません。
たとえば準備の際に、タイヤを運ぶという何気ない作業でも担当クルーが、内圧をチェックして『いつもと違うけどこれでOK?』とエンジニアに確かめるかもしれない。自分の担当以外でも互いにチェックし合い、つまらないミスやトラブルを防ぐことによってようやく勝てるようになるんです」

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チームワークの基礎を作るためにドライバーが果たす役割は大きい、と松田は言う。たとえばマシントラブルでフィニッシュを待たずにレースを終えなければならないとき、松田は険しい表情で憤然とピットへ帰って来る。
そしてピットクルーと目も合わさず早足でピットを横切り、途中ピットを仕切るパーティションに無言のまま拳を打ち付けると、モーターホームのプライベートスペースへ姿を消す。ピットの空気は凍り付き、ヒリヒリとした緊張感が漂う。

傍目から見れば、チームワークを意識して闘うと言いながら怒りを露わにするのは傲慢とも思える態度だが、松田は限界線上で闘うドライバーとしては当然だと言い切る。

「そこだけを切り取って見られたら、仲間を無視したワガママでイヤなヤツでしょうけれども、ぼくはそうすることによって、チーム全員が緊張感を持ってひとつの方向を見てくれるようになると信じています。
そのかわり、ぼくはドライバーとして結果を出すために全力で取り組む。レースは、チームのどこかに『まあいいか、仕方がない』という雰囲気があったら負けるんです」

勝ちにこだわる極端なまでの姿勢は、2006年のフォーミュラ・ニッポンから昨年まで8年間在籍したチームIMPUL率いる星野一義から学んだものだ。松田が本当の笑顔を見せるのは、チームの努力が結実して結果が残せたときだけなのだ。(つづく)

【第3章 チーム監督・星野一義の実像】
■第1回 眠れない夜
■第2回 山あり、谷ありの2014年シーズン
■第3回 チームの力を十二分に引き出すために

【第2章 GT500ルーキー佐々木大樹の可能性】
■第1回 HOT & COOL
■第2回 GTは抜き方、抜かれ方が重要
■第3回 23歳が刻んだ豊富な経験と幅広いテクニック

【第1章 レーシングドライバー松田次生の世界】

■第1回 1㎜の違いを見分ける繊細さ

■第2回 ヒリヒリとした緊張感が勝利を導く

■第3回 心拍数200の全身運動

■第4回 勝つための引き出し

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