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【Sports Graphic Numberタイアップ企画】GT500ルーキー佐々木大樹の可能性 第1回

2014.10.31 Fri

第7戦タイ・ラウンドで自身初の表彰台に上った佐々木大樹。トップまであと1.9秒と追い詰めながら、常に冷静に、熱くなりすぎないように自分に言い聞かせていたという。まるでベテランドライバーのような雰囲気を漂わせる佐々木の、レーシングドライバーとしての可能性を3回にわたってお届けする。

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大串信=文 text by Makoto Ogushi
橋本篤=写真(ポートレイト) photograph by Atsushi Hashimoto
上尾雅英=写真(レース) photographs by Masahide Kamio


■第1回 HOT & COOL

予選2番手からスタートしたD’ station ADVAN GT-Rに乗る佐々木大樹は、スタートドライバーを努めたミハエル・クルムからマシンを引き継ぐと、猛然とトップを走るライバル車の追い上げにかかった。2014年SUPER GTシリーズも大詰め、タイのブリーラム県に新設されたチャン・インターナショナルサーキットで開催された第7戦決勝レースでのことだ。

じつはレース前半を走ったクルムは快調にトップ争いを展開したものの、熱害によるパドルシフト(セミATの変速装置)の一時的トラブルにより一旦後退を強いられていた。無線を通してその状況を知ってマシンを引き継いだ佐々木は、「同様のトラブルが出ませんように」と神頼みをしてレース後半を闘うためコースへ飛び出していった。

トラブルさえ出なければ速く走る自信が佐々木にはあった。GT500ルーキーである佐々木は、この週末に行われた公式予選では、わずか100分の3秒差でポールポジションを逃していた。ルーキーとしては見事な結果ではあったが、佐々木は悔しくてならなかった。その悔しさを晴らすために、佐々木は猛然と走り始めた。

ピットアウト直後は5番手に順位を落とした佐々木は、前方にいるライバル車を追った。レース終盤、3位に順位を上げた佐々木の標的はトップ、2番手を走るライバル車だった。この2車はレース折り返し点でタイヤを交換せず、ピットストップ時間を短縮して順位を上げたものの、タイヤの消耗は進み決して万全の状態ではなかった。これに対し、佐々木のGT-Rは予定通りタイヤを交換し明らかな優位にあった。ラップタイムを比較すれば、トップを走るマシンに追いつき追い抜くことも可能なペースだった。

コースを疾走する佐々木にはチームから「トップ2車を追いかけろ」と指示が飛んできた。佐々木自身も「勝ちたい」という気持ちが強まり、パドルシフトにトラブルが発生する不安などは忘れていた。

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(クルムと交代し、トップを猛追する佐々木)

だが佐々木は状況を冷静に捉えて闘っていた。「こういうときこそ落とし穴が待っている場合があるので、集中しながら冷静にならなくてはいけないんです。イケイケで行って、結局、リタイアというケースをこれまで何度も見てきているので、それだけは気をつけました。抑えるところは抑えて、行くところは行ってと、メリハリをつける走りに徹しました」

佐々木が追いかけていた前方2車のうち1台は、タイヤを消耗させすぎてレースから脱落していった。残るはトップを走る1台。ラップタイムは明らかに佐々木が速い。しかし単純なラップタイム差の積算だけでは順位が決まらないのがレースだ。

力走は実らなかった。佐々木はあと1.9秒というところまで詰め寄りながら、順位を入れ替えることができないまま2位でチェッカーフラッグを受けることとなった。その瞬間の気持ちを佐々木は素直に「悔しかった」と言う。

「最後まで何があるかわからないのであきらめてはいませんでした。あと3周あれば(自力で)前に行けたと思います」

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(GTレース初の表彰台に上った佐々木とチームメイトのクルム)

チームとしては2年ぶり、佐々木自身は初の表彰台である。しかもGT500ルーキーとして、強豪をギリギリまで追い詰めるという好レースを貫徹した結果だ。ある意味、大きな戦果ではあるが、佐々木はレースが終わっても事態を冷静に受け止めていた。

「初めての表彰台はとても嬉しかったんです。でも、やっぱり真ん中に立ちたかった。ぼくたちは優勝を目指して闘っているのであって、2位を目指していたわけではない。それはぼくだけじゃなくて、たぶんチーム全員が同じ気持ちで悔しかったんじゃないかなと思います」

チームも自分も今シーズンここまで成長を続けてきたから成績が向上してきたと分析する佐々木。今年初めて経験するGT500のシーズンをどう捉え、自分の中でどう受け止めて闘ってきたのか、次回では振り返る。
(つづく)

【第3章 チーム監督・星野一義の実像】
■第1回 眠れない夜
■第2回 山あり、谷ありの2014年シーズン
■第3回 チームの力を十二分に引き出すために

【第2章 GT500ルーキー佐々木大樹の可能性】

■第1回 HOT & COOL
■第2回 GTは抜き方、抜かれ方が重要
■第3回 23歳が刻んだ豊富な経験と幅広いテクニック

【第1章 レーシングドライバー松田次生の世界】

■第1回 1㎜の違いを見分ける繊細さ

■第2回 ヒリヒリとした緊張感が勝利を導く

■第3回 心拍数200の全身運動

■第4回 勝つための引き出し

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