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【Sports Graphic Numberタイアップ企画】GT500ルーキー佐々木大樹の可能性 第2回

2014.11.07 Fri

今年GT500にステップアップした佐々木は、目覚ましい早さで対応し、ついに初の表彰台を獲得した。GT300とGT500のマシンが混走する難しいレースをどのように捉え、レース展開を読んでいるのか。23歳の思考の一端を覗いた。

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大串信=文 text by Makoto Ogushi
橋本篤=写真(ポートレイト) photograph by Atsushi Hashimoto
折原弘之=写真(レース) photographs by Hiroyuki Orihara

■第2回 GTは抜き方、抜かれ方が重要

佐々木大樹は、今年GT500クラスにステップアップしたルーキーである。今年から車両規則が変わり、ダウンフォースが増えてコーナリングスピードが上がり、最高速も20~30㎞/hアップしたGT500のクラスのマシンに初めて乗ったとき印象を、佐々木はこう話す。

「本当に速いのでビックリしました。これまでレースをやってきて怖いなと思ったことはなかったんですが、今年のGT500はコース幅が狭く感じて、最初は怖いと思いました」

だがSUPER GTは単純に速さだけを競うレースではない。上位クラスのGT500クラスに対し、ラップタイムにして1周約10秒遅い下位クラスのGT300クラスが混走する過程で、GT500はGT300をいかにうまく抜くか、GT300はGT500にいかにうまく抜かれるかというテクニックを問われることになる。

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佐々木は、レーシングカートでその才能を見出され、NDDP(ニッサン・ドライバー・デベロップメント・プログラム)の一員としてフォーミュラカーによる四輪ドライバー育成を受けてきた選手である。純粋な「速さ」を追求するフォーミュラカーで育った佐々木は、2012年、20歳でGT300クラスにデビュー。当初は混走のSUPER GTに戸惑ったという。

「基本的には前のクルマを追いかけるレースしか知らず、後から追いかけてくるクルマを気にするレースは、やったことがなかったので、なぜこんなに譲らなくちゃいけないんだろうって思いました。でもGTは、そういうレースなんだと頭を切り替えて、逆にそこをうまく利用すれば後ろのクルマとの間隔を拡げることもできるんだと考え直して走るようにしました」

佐々木はレースのビデオなどを参考に自分の頭の中でイメージトレーニングを繰り返し、追い抜く側の心理まで想定して「うまく抜かれる」走り方を組み立てていった。それはフォーミュラカー育ちのドライバーにとっては新しい挑戦だった。

「どういう抜かれ方をするとロスが大きいのか、ここでGT500に抜かせるとロスが大きいから、逆に手前で少し遅く走って先に抜かせてしまったほうがいい、と計算して走るんです」

GT500にステップアップした今シーズンは逆に、周回遅れとして前方に現れるGT300をいかにうまく抜いていくかが問われる。GT300同士が繰り広げる戦いをうまくすり抜け、場合によってはGT300を利用して、GT500のライバル車を牽制するテクニックが必要になるのだ。

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(SUPER GTレースでは抜き方も重要なテクニックだ)

「コーナーの手前でGT300に追いついた場合、もし追いついた段階ですぐにGT300を抜いてしまうと、後ろのGT500もくっついてきて、一緒にコーナーに入ることになります。でも敢えてGT300を抜かずにコーナー入り口ぎりぎりまで並んでいれば、背後のライバル(GT500)は行き場所がなくなります。そうしておいてコーナーの進入でGT300を抜くと、コーナーの中でライバルとの間にGT300を挟みこむ形になるので、ライバルとの間隔を開くことができるんです」

相手の動きを読み、さらにクラスの異なるGT300の動きを読み、それぞれをどんな位置に置いて走れば最も効率よくレースを進められるのか。佐々木は冷静に状況を捉え、考えながら決勝レースを走る。

「予選のタイムアタックでは熱くなることも必要です。でも決勝レース中は、基本的には冷静に考えて走るのが大事だと昔からぼくは考えています。だからレース中は、自分が熱くなりそうになっても『落ち着け、落ち着け』と自分に言い聞かせています。レース展開、抜き方やタイヤの消耗などGTは、ものすごく頭を使うレース。だからこそ冷静でないとだめなんだと思います。フォーミュラカーレースとは異なるレースなんです」

GT500クラスのルーキーの佐々木は、先日タイで開催されたシリーズ第7戦の予選でポールまであと100分の3秒差の2位につけ、決勝でも2位に入賞、パートナーのミハエル・クルムとともに自身初の表彰台に上がった。当初、ただ走らせるだけでも怖いと感じたGT500クラスのマシンを佐々木は乗りこなしたばかりか、GT300クラスで闘っていた経験を生かしながらライバルと駆け引きを繰り広げレースを走りきった。たんにGT500クラスのマシンを速く走らせただけではなく、頭脳を働かせたうえで肉体を正確にコントロールしたからこそ得られた戦果である。23歳の若さで、どうしてクレバーな速さを獲得することができたのか――。(つづく)

【第3章 チーム監督・星野一義の実像】
■第1回 眠れない夜
■第2回 山あり、谷ありの2014年シーズン
■第3回 チームの力を十二分に引き出すために

【第2章 GT500ルーキー佐々木大樹の可能性】

■第1回 HOT & COOL
■第2回 GTは抜き方、抜かれ方が重要
■第3回 23歳が刻んだ豊富な経験と幅広いテクニック

【第1章 レーシングドライバー松田次生の世界】

■第1回 1㎜の違いを見分ける繊細さ
■第2回 ヒリヒリとした緊張感が勝利を導く
■第3回 心拍数200の全身運動
■第4回 勝つための引き出し

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