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【Sports Graphic Numberタイアップ企画】チーム監督・星野一義の実像 第2回

2014.12.12 Fri

2014年シーズン、星野一義率いるTEAM IMPULは初戦から3戦連続表彰台と、最高のスタートをきった。しかし、終わってみれば悲願のタイトル獲得はできなかった。あと一歩、足りないものは何だったのか。長かったシーズンを振り返る。

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大串信=文 text by Makoto Ogushi
白澤正=写真(ポートレイト) photograph by Tadashi Shirasawa
折原弘之=写真(レース) photographs by Hiroyuki Orihara

第2回 山あり、谷ありの2014年シーズン

2014年SUPER GTシリーズ最終戦でTEAM IMPULが狙っていた逆転シリーズチャンピオン奪取は、オープニングラップのアクシデントにより夢で終わった。

「レースだから、ああいうことは確かにある。あるけど何度も繰り返しちゃいけないんだ。JP・オリベイラは確かに速い。でも速く走って、失敗しないのが優れたドライバー。今回のはやっちゃいけない失敗だった。あれで1シーズン積み重ねてきたチームの仕事は全部無駄になっちゃったし、(ライバル車と接触したから)まるで味方の23号車(NISMOチーム)を逃がすためにワザとやったみたいな形になっちゃったものね」と、星野一義監督は事態を振り返る。

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(安田の走りを見守るデ・オリベイラ(中)とクルー)

SUPER GTシリーズGT500クラスを闘うチームは、通常2人のレーシングドライバー、10人弱のメカニック、1人ないし2人のエンジニアで構成される。マシンの整備とセッティングの作業を行うのがメカニックたち。ドライバーはそのマシンを走らせる。走行で得られたデータを元にセッティングの変更や戦略の立案を行い、メカニックに指示を出すのがエンジニアである。この作業を循環させてマシンを仕上げ、予選タイムアタックを行い、決勝レースの戦略を立案してスタートに臨む。監督は、これらを束ね、最終的な指揮を行う。

星野率いるTEAM IMPULは今シーズン序盤を快調に闘って選手権ポイントを重ね、第3戦でランキングトップに立ち、チャンピオン候補となった。だが、成績に応じてハンディを課せられるのがSUPER GTの競技規則である。

「シリーズ序盤が調子良くて、途中で苦戦したのは、ハンディが積み重なったせい。でも、ハンディが厳しいなら厳しいなりに1点でも2点でもポイントを取らなくてはチャンピオンにはなれない。チームは努力してくれたと思っている」

TEAM IMPULが今季最大のハンディを背負ったのは、8月31日に行われた第6戦鈴鹿1000km。シリーズで最も長く、しかも真夏の太陽の下で闘う過酷なレースに、94㎏のウェイトハンディは重い。

「レースでは何が起きるかわからない。期待してはいけないんだけど、長いレースだから前を走っているチームにトラブルも起きる。そのとき追い抜くためには、こっちもトラブルを克服する必要がある。うちのチームは、レース中に真っ赤になるほど熱を持つようなパーツでも、何か不調になったらすぐ交換して走り、1点でも2点でもポイントを獲って帰ろうと、いろんな準備や練習を重ねてレースに臨んだんだ」

安田裕信/デ・オリベイラ組は、トップから8ラップ遅れたものの、長丁場のレースを10位で終え2点を加算した。「1点でも2点でも」と言っていた星野にとって、10位、2点という結果はレースウィークの手応えからすると微妙だった。

「鈴鹿のレースはもったいなかった。もっと行けたはずだった。ドライバーはコースを飛び出す、マシンにはトラブルが発生する、ピット作業でもミスがあった。このうちひとつでも出たらレースには勝てないのに、あのレースでは3つも重なった。それがなかったらもっと上位に行けたと思うけど、それでもポイントを取ったんだから、良しとしなくちゃね。みんなが努力した結果だから」

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(炎天下のなか5時間半にもおよぶ長丁場の鈴鹿1000㎞)

だが第6戦を含む中盤で苦しんだ結果、タイで開催された第7戦ではハンディが軽減された。その結果、予選は10番手だったにもかかわらず決勝では3位入賞を果たして11点を獲得、逆転でのシリーズチャンピオンへ望みをつないで最終戦を迎えたのだった。

「タイは勝てるレースだった。他車に比べて、圧倒的にGT-Rが速くてGT-Rが勝てるレースだった。でも、少しトラブルがあったうえ、ライバルチームはタイヤ無交換という思い切った作戦で前に出てしまった。敵ながら、すごいとしかいいようがないよ。あとで聞いたら、現場を走り始めてから『これは無交換で行けそうだ』と決めたんだってね。うちはそれができなかった。完敗ですよ」

レースはチームの総合力で勝敗が左右される。ドライバーだけが逸っても、監督が意気込みすぎても、組織はうまく機能しない。タイでは、いまひとつチームが攻めきれなかった。チームの人間たちをひとつの方向に向かせ、力を発揮するにはどうしたらいいのか、現役を引退してから12年、監督・星野はずっと模索しつづけてきた。(つづく)

【第3章 チーム監督・星野一義の実像】
■第1回 眠れない夜
■第2回 山あり、谷ありの2014年シーズン
■第3回 チームの力を十二分に引き出すために

【第2章 GT500ルーキー佐々木大樹の可能性】
■第1回 HOT & COOL
■第2回 GTは抜き方、抜かれ方が重要
■第3回 23歳が刻んだ豊富な経験と幅広いテクニック

【第1章 レーシングドライバー松田次生の世界】
■第1回 1㎜の違いを見分ける繊細さ
■第2回 ヒリヒリとした緊張感が勝利を導く
■第3回 心拍数200の全身運動
■第4回 勝つための引き出し

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