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コラム第4弾、シリーズ2連覇を支えたトラックエンジニア、中島健さんにインタビュー

2012.12.21 Fri

今回、お話を伺ったのは、シリーズ2連覇、
S Road REITO MOLA GT-Rを支えたトラックエンジニア 中島健さん。
経験に裏打ちされた直感力の秘密に迫りました。

「大切なのは、こりかたまった考え方を持たない。
とにかく耳を大きくすること。」

NISMO所属のトラックエンジニア、中島は静かに語った。
全身から漂う威圧感。頑固そうな眼光。
笑顔は絶やさないけれど、きっと現場ではきっと怖いんだろうな、
それが第一印象だった。

トラックエンジニアはクルマのセッティングや仕様を決め、
タイヤを選定する。さらにチーム監督とレースの戦略を話し、
ドライバーの状態をつねに把握する。
あらゆる情報がトラックエンジニアに集約され、
彼はそこからひとつの結論を導き出す。
さまざまな楽器の音を調整して最も調和のとれた最高の音色をひき出す、
オーケストラの指揮者のような存在ですか?とたずねると、
「そうですねえ…ええ、そういうものかもしれません。」
中島には無駄な言葉がない。

もともと通称『バリ伝』と呼ばれた漫画『バリバリ伝説』が好きだった。
「バイク漫画ですけど、なぜかレーサーの巨摩郡ではなく、
メカニックの太田信一が好きでした。
より複雑な4輪の世界が知りたくてクルマのエンジニアに
なろうと思いました。
『技術の日産』っていうキャッチに魅かれましたね。
スカイラインとか、日産のクルマがずっと好きでしたし、
どうしてもNISMOで働きたくて…」
ほんとうにクルマが好きなんだなあというのが表情でわかる。

2連覇できた要因は?とたずねると
中島はこのインタビューでもっとも厳しい顔をして、こう話した。
「去年の第二戦の富士…雨が降ってきました。激しくなっていく。
順位は、どんどんさがりました。
合っていないタイヤを選択してしまったんです。
テスト走行、路面温度、雨の量、すべての条件を
インプットして導き出した結論でも間違うことがある。
怖いのは先入観、思い込み。チームの誰もが疑わなかった。
でも、私がもっとワイドに物事を見なくてはならなかったんです。
耳を大きくしていなかった…。
ただ、あの失敗があったから、強くなった。
間違いなくあれは、ターニングポイントでした。」

レース中、インカムでドライバー、スタッフと話すとき、
必ず話す前に一拍置くという。
「私の動揺は、みんなに伝染します。どんなときにも同じトーンで話す。
それだけは心がけています。」
テレビ中継でドライバー柳田真孝やロニー・クインタレッリと話す声を
聴いたことがあるだろうか。ほとんどが中島の声だ。
「とにかく、24時間四六時中、クルマのことばっかり考えていますね。
あ、でもサーフィンやってるときだけは忘れるかな…
海の上にいるとね。」

どれほどの責任、ストレスが中島に覆いかぶさっているんだろう。
でも、この男はそれを全身で真正面から受け止めているように見えた。
「料理がね、好きなんです。前菜、スープ、魚、肉。いろんな食材が
あったまり、同時に食卓に並ぶ。その段取り、工程が好きなんです。
すべての料理から湯気が出ているの、いいですよね。」

恒例なので手を見せてもらった。

分厚くて大きな手。職人の手だった。
この手を見ているだけで、安心感がわいてくる。
「前人未到の三連覇、がんばります!」
はじけるように笑った。
最大公約数を導き出す直感力の秘密は、絶え間ない取材、情報収集と
どんな雑音も聞きのがさない大きく開いた耳だった。

文・写真 北阪昌人