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『チーム日産~モータースポーツにかける者たち』 第11回 NISMO開発部 ジェネラルマネージャー 石川裕造

2013.07.19 Fri

日産モータースポーツを支える者たちに、あらたな光をあてるコラム。
第11回は、NISMOのエンジン設計を担当する、石川裕造。
エンジンを愛し、エンジンと共に人生を歩んできた求道者の、
素顔に迫ります。


「いい状態のエンジン音?そうですねえ・・・
燃焼がそろってくると、いい和音を奏でるんですよ、
それはね、張りのある綺麗な音なんです」
石川の優しい少年のような目が、さらにキラリと光った。
エンジンと聞いただけでこんなに嬉しそうな顔をするひとに
会ったことがない。

「ボクは、小さい頃からクルマが大好きなんですけど、
クルマってエンジンがかかると『命が入った!』って思うんです」
あの音。あの振動。確かに、エンジンは心臓だ。
「父がね、ボクが生まれる前、タクシーの会社に携わっていて、
昔のクルマってハンドルスターターっていうのがあって、
それを手で回してエンジンをかけたって話をしてくれたんですよ。
子供ながら、それは命を吹き込む儀式みたいに思えて・・・」
その話は少なからず、今の石川の仕事に、つながっているのだろう。

「スポーツっていうのは、ルールを知っていると、さらに
面白さが倍増しますよね。モータースポーツもそうだと思います。
たとえば、シーズン中、エンジンは三つしか使えません。
鈴鹿の長い距離のレースで二つ目に変えようとか、
いろいろ考えるわけです。もし、三つが全部壊れたら、
四つ目を使うことはできますが、ペナルティを負うことになります」
恥ずかしながら僕はそういうルールを知らなかった。
「だからもちろん、壊れにくいっていうのが最低条件なんですが、
より少ない燃料で最大の馬力をどう出すか?
毎日毎日が、戦いなんです」
ここまで進化してきて、さらにまだ先があるのだろうか?
「ほんと、不思議ですよね。1,000以上ある部品の組み合わせ、
バランス、角度の違いや素材の変化で、まだまだ改善できるんです。
レースの度に現場に行ってドライバー、エンジニア、チームのみんなと
話をして改良していきます」

終わりなき旅。毎日が切磋琢磨の連続だ。
少ない燃料で最大の馬力・・・。ふと思い至る。
レースで走るクルマは量産車より遥かに燃費がいい。
モータースポーツの現場でのあくなき性能への挑戦は、
街中を走る量産車に生きている。

手を見せてもらうと、白く長い指がそこにあった。
武骨な職人というより、ピアノを奏でる芸術家の手。

そんなに毎日、エンジンのことばかり考えていて、
ストレスの解消はどうされているんですか?と尋ねると、
「あまり、ストレスはたまらないんですが・・・
あ、コーラス!ベートーヴェンの第九。
歌はいいですね。娘の学校が女子校なんですが、
男性パートを父親たちが歌うんです。
今年の3月に大きなホールで歌ったんですが、
気持ちよかったです。いい和音を奏でるには、
自分の声ばっかり大きくしてもダメなんですね、コーラスって」
コーラスという燃焼がそろうとき、ホールに張りのある声が反響する。
石川は今日も、エンジンという名の合唱に耳を傾ける。
強い命を、吹き込むために。

文・写真 北阪昌人

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